3日目、電車に乗り、アユタヤに行ってみた。
郊外へ行くためのフアランポーン駅は広く、人々は何処かへ出発するために大きな荷物を抱えて電車を待っていた。
乗車券は、乗る電車の席の快適さによって料金が決まっていた。エアコン付き、指定席の車両は高く、席が保証されていない暑い車両は安かった。
せっかくなので1番安い3等席車両に乗ってみることにした。確かアユタヤまで15バーツ(50円)くらい。
どの車両に乗ればいいのかわからず、とりあえずエアコンの付いていなさそうなモワッとした空気の車両に乗った。空いている席に座っていたが、しばらくするとそこは私の席だという親子が現れたので、立って外を眺めていた。
出発後すぐに景色が変わった。バンコク中心街には背の高い高層ビルやデパートが立ち並び、そこから少し出るとトタン屋根を自分でつけたような家々が並び、混沌とした住宅地が広がる。そこからさらに郊外へ進むと、ほぼ何もない乾燥した地域がずっと続いた。
アユタヤへは1時間半くらいで到着した。観光地なので、駅も混雑していた。トゥクトゥクで案内してもらうか、レンタサイクルで頑張ってみるか悩んだ結果、せっかくなので(?)レンタサイクルにしてみることにした。
駅の近くに何軒かレンタサイクルのお店があり、なんとなく安心できそうなお店で自転車を借りた。パスポートの預かりと引き換えに借りた自転車はオンボロで、漕ぐたびにギーッという大きな音を立て、私はアユタヤ中の人から注目の的になってしまった。
WIFIがないので、WIFIがあるうちに撮っておいたGOOGLE MAPの画像を見て、こっちのほうに進めばいいのかなと思いながら出発すると、知らないおじさんがこちらを見て、ジェスチャーでそっちじゃないよと必死に伝えてくれた。どうやら自転車で高速道路に乗ってしまうところだったらしい。
このアユタヤ観光、自転車を選んだことにより、思っていた以上に大変だった。日本みたいに歩行者や自転車の人を考慮した道になっておらず、なかなか横断歩道が現れないので、行きたい方面の道に渡れない。しかも片方4車線くらいある道を、車はスピードを100キロくらい出して走っているので、道を渡るのも命がけだった。
道路の反対側を見ると、自転車を漕いでいるおそらくヨーロッパから来たのであろうカップルがいた。同じようにヒイヒイ言っていた。
ようやく到着したのがワットマハタート。
この木の根元の仏像の顔が見たかった。
元々はきらびやかな寺院だったそうだが、戦争で崩壊し、その時に地面へと転がり落ちた仏像の顔が、時と共に木の根っこに包まれていったのだという。
暑い日だったけれど、ワットマハタートの木々の葉は幾分か暑さを和らげているようだった。
遺跡内には、野良犬がたくさんいた。みんな穏やかで、暑さに疲れてか、すやすや寝ていた。
帰りに道端のお店に入って食べたパッタイは、この旅の中で1番美味しかった。
なんとか駅の近くまで戻り、自転車を返した。
バンコク行きの電車を待ちながら、生暖かい風に吹かれると気持ち良くて、目を瞑ったらすぐに寝てしまいそうだった。
バンコクに着いて、1度ホテルで休んだ後に、タラート・ロットファイ・ラチャダーというナイトマーケットに向かった。広い敷地に、小さな屋台が連なり、仕事終わりであろう若者で溢れかえっていた。
小さな鞄を前に抱え、ビールを持ちながらマーケットを練り歩いた。レンタサイクルで疲れた身体に、シンハービールが染みた。
揚げてあればきっとお腹を壊さないだろうと、小さなチキンを買って食べ、カラフルな屋台と賑やかな人々を眺めた。
未来と過去が混ざったような現在の混沌の中に、活気よく生きる人々の暮らしを垣間見た。角田光代さんが、タイはクセになると言っていたけれど、気がついたら私もなんだか虜になっていた。この街の未来はどんな姿だろう。
では、また会う日まで。